コーヒー溺路線

 

「和人先輩」
 

 
「ああ、俊平か。どうかしたのか」
 

 
「富田さんに新しい恋人ができたみたいなんです」
 


 
俊平は大きな勘違いをしている。
毎日俊平から逃げるようにしてコーヒーショップへ駆け込む彩子は、そのコーヒーショップへ男に会いに行っているのだと勘違いをしている。
 

だから自分を拒むのだと思い込んでいる。
 


 
「新しい恋人って、どういうことだ」
 

 
「毎日僕の誘いを断って何かの店に立ち寄るんです。彼女は知り合いが運営する店なんだと言っていましたけど」
 

 
「毎日通うのはさすがに何かあるというわけか」
 

 
「だって本当に毎日なんですよ、おかしいじゃあないですか」
 


 
俊平の血走った眼に和人はゾッとした。
今は何を言おうと聞きはしないだろう。
 

俊平は独り言のように口ごもりながら何かを言っていた。和人はそれを直視していられず、その場から去った。