「なによそれ」

 苦笑しながら言うと、てゐばあは真っ白な入れ歯を見せてニカリと笑う。


「銭湯に来たらねぇ、こうやって富士山を見て歌を歌ってやるんだよ。富士山にいつでも会えるなんて、嬉しいじゃないか。だから感謝の歌なんだよ」

「誰の歌なのさ?」

「あたしが今作った歌に決まってるじゃない、気持ちを込めるならやっぱり"おりじなりてい"は重要だからね」


 てゐばあはアッハッハと笑って、私の背中をぽんぽん叩いた。