気になる背中

「……大塚君のお姉さん、すごく優しい人だなって思ったよ。それにすごく綺麗だった」

「そう？俺にはただの煩い姉貴だよ」


私の言葉に、大塚君がわざとらしく顔をしかめてそう言った。

その言い方がなんだかおかしくて、思わず笑ってしまう。


「神崎の兄さんは？」

「……え？」

「どんな人？」

「えっ、えっと……、私と違ってなんでも出来て、すごく頭がいいの」

「へぇ……。

優しい……？」


大塚君は私の言葉を聞いた後、そんな風に訊いてきた。

優しいかと訊ねられて、私は少し戸惑った。


お兄ちゃんは無口であまり笑わない。

大塚君のような、愛想も良くていろいろ気遣ってくれる人を優しいと言うのなら、お兄ちゃんは優しいとは呼べないかもしれない。



……でも、



"怪我、無かったか"


……あの時の言葉は、すごく温かかった。

すごく嬉しかった。




「……お兄ちゃんは、ちょっと無愛想で冷たいところがあるかもしれないけど、


でも、私にとっては、すごく……すごく優しいお兄ちゃんだよ」



口にするのは恥ずかしかったけれど、大塚君にはちゃんと知っていて欲しくて、精一杯気持ちが伝わるように言葉を紡いだ。


それがちゃんと伝わったのか、大塚君は私の言葉にふわりと優しく微笑んだ。