ついつい龍弥のスピードで走ってしまった。
私は走るのが大の苦手。
だから体力はこれっぽっちもない。
そんな私が、男子と同じスピードで走るなんて…。
なんて私はバカなんだろう…。
ぼーっとしていると、いつの間にか龍弥のおでこと私のおでこが触れている。
「…うん。熱はねぇな。俺のせいで疲れさせちまってごめんな。」
こんなに甘い声の龍弥は初めてだ。
16年間一緒に居たけど、初めて聞いた。
私は余計にぼーっとしてしまった。
「よし!屋上行くか!」
「ほぇ?」
私はびっくりしてしまったせいか、変な声が出てしまった。
「ほら、行くぞ。」
そうして私は、龍弥に手を引かれて屋上への階段を上っていった。

