あの時の違和感の正体はこれか……。

大方、ライトか何かでモールスでも送ったのだろう。

傭兵と言うのはこうも用意周到なのか? いや、このベリルという男がそうなだけだろう。

蓮城麻美は、そう結論づけて口角を吊り上げる。

「くくくっ、貴様なら別にいいだろう。ちゃんと処分しろ」

そう言って、蓮城麻美はベリルの目の前でハードディスクを放り投げた。

同時に通路中に紫電が走る。

「アル、ポイント3476aR! 294までサポート!」

ベリルの目の前で麻美の姿が消える。

次の瞬間、足音だけが薄暗い通路に響き渡った。

そして、取り残された内、現状を理解出来ているのはベリルだけになった。

「あの……、えっ……とベリル。今の何?」

「さあな……、悪魔でも出たんじゃないか?」

それだけ伝えて、ベリルはハードディスクを拾い上げると、踵を返して地上へと向かった。