三人が動かなくなったのを確認すると、蓮城麻美はアインの傍らにしゃがみこんだ。
センタールームのデータは全て消去されていたからだ。

だから、彼が持っているであろう研究データを探す為にアインの亡骸に触れた。

そして、案の定直ぐに、小型のハードディスクが見つかった。

その様子を後ろから見ていたベリルが、銃口を麻美に向ける。

「何の真似だ? ベリル・レジデント」

「私は、お前を信用していない」

地下通路に沈黙が下りる。

「私に取ってこの程度の物が無意味なのが、解らぬ訳ではあるまい」

「物理学と遺伝子工学は別物だ。麻美……、お前が人DNAに変革をもたらす物を欲していたとしても、不思議ではない」

「だとしたら……、頭を撃ち抜くか? ベリル」

その言葉に思わずベリルは、笑いを漏らす。

「頭は、うんざりする程痛いからな。止めておく」

「なら……」

言葉を続けようとした麻美の耳に足音が聞こえた。

不思議に思って顔を上げると、通路の先に男の影が現れた。

「ごめんベリル。遅くなって……、ってアレ?」

「ダグ、気を抜くな」

ダグと呼ばれた青年の後ろから、更に四人現れる。

それを見て麻美が溜め息を漏らす。

「一体いつの間に……」

「通信手段が無線だけとは限らない」

その言葉とダグと言う名に、研究所侵入直前の言葉が思い出された。

『ダグ、ヘリ近くのコンテナに注意しておいてくれ』