自室に戻ったグランは、部下からの報告を受けていた。

「二人共逃げられた?」

「はっ! 娘は武装した男と共に。シュタイナー博士も武装した女性と共に」

「何者だ! どこかの政府機関が動いているのであれば、そうそうに移動する必要がある」

部下からの報告にグランは激昂した。

どいつもこいつも簡単に逃げた等と平気で言う。こいつらは犯罪組織に身をおいているという自覚があるのだろうか?

「はっ! 男の方を追い掛けた者に写真を撮らせようとしましたが上手くいきませんでした。女の方はレンジョウアサミと名乗ったそうです」

部下の報告を聞きながら、報告書に目を通す。女の方は画像が荒いが顔写真がついてある。

科学者と名乗った?

続いて、男の報告書を見るとグランは部下に報告書を投げつけた。

「お前達には、頭がついているのか? 女の写真はアインに見せろ! そして、この男だ! 走行中の車から二台同時にタイヤを撃ち抜ける男が世界に何人もいると思っているのか! フリーの傭兵か殺し屋で金髪にエメラルドの瞳! さっさと何者か調べてこい!」

「はっ! しかし政府筋の者かも……」

「どこかの諜報員ならとっくの昔に武装した集団に囲まれている筈だ。わかったらさっさと行け!」

部下が出て行ったのを確認してから、グランは溜め息をついた。

やはりこんな研究に手を染めるべきじゃ無かったのだ。

傭兵をやめてから武器商人になって10年。東南アジアでは最大級の死の商人となった。

そして拡大していく自らの組織に有頂天になっていたのだ。