──某国、研究施設、地下。

グラン・マッコイは、背筋に悪寒を感じて身を震わせた。

「どうかされましたか? グラン様」

その様子を見て傍らに佇む科学者、アイン・ビルダーが問い掛けてくる。

グランはその言葉にどうして悪寒が走ったのか自問自答してみたが、納得できそうな答えがなかった。だからその質問には答えずに目の前の男に視線を戻した。

「ジム、いい加減に娘のいどころを吐け。そうしないとお互いに取って不幸な事になる」

「おこと……、わりだ……」

全身傷だらけのジムと呼ばれた男は、両腕を高い位置で鎖に繋がれ、座る事も許されない状況になっている。

「グラン様、そろそろ自白剤を投与した方が宜しいのでは?」

これだから科学者は嫌いなんだ。あまりに短絡的に物事の局面を捉えすぎる。

そうは思いながらも、彼はそんな素振りを見せずに話を続けた。

「そんな物は使わなくていい。どうせ見つかるのは時間の問題だ。無惨な姿になった娘を見て後悔するがいい」

「外道め……」

ジムの目は、力を失わずにグランを見つめる。

その目を見てこの男もまた、自分の嫌いな科学者なのだとグランは改めて認識した。

グランが踵を返して扉へと向かう。それを慌ててアインが追う。

部屋を出る間際、グランは身体は向けずに視線だけをジムに投げた。

「ウルリッヒ・シュタイナー博士……だったかな? 君の恩師だったか? 彼の所にも兵を向かわせた」

それだけを伝えて、彼は部屋をでる。ジムに残されたのは、ただ涙を堪えて二人の無事を祈る事だけだった。