容赦なく引鉄が引かれる。

「ピエール、ママンを悲しませるな」

彼女に取って、弾が出ない位置にシリンダーを止める事など造作も無いことではあるのだが、ピエールにそれが分かる筈もない。

再び彼女が撃鉄を引いた瞬間、ピエールの声が屋敷中に響き渡った。



彼女は依頼主の名を聞いた後部屋を後にし、シュタイナー博士を伴い屋敷を出る。

屋敷の外には、緑に赤のラインが引かれたミニクーパが止めてあった。彼女等は警護の人間も連れて車に乗り込む。

「チェジュ基地へ」

『了解しました』

蓮城博士の声に機械音声が答える。そして、車はひとりでに動き始めた。

「なんとっ！　オートドライブですか？　それにしても何故軍の基地へ」

シュタイナー博士は、車が動きだした事に驚きながらも当然の疑問を口にする。

「すぐにわかる。安全な宿が必要だろう？」

そう言って、彼女は軍の高官に電話をする。彼女が言った通り、すぐに理由はわかった。

だが、とてもスキャンダラスな内容を口にして、高官を脅しているのをシュタイナー博士は聞かなかった事にした。