『一応何人かに声は掛けておくよ』

「頼む」

ベリルはそれで会話を切り上げた。隣でその様子を見ていたニナが、口を開く。

「お仲間……、多いんですね。何をされているんですか?」

車がゆっくりとスピードを落として止まる。

「傭兵をしている。ここらへんでハッキリしよう。休暇中で仕事をしたくなかったがこうなってはしようがない。私を雇うか?」

ニナの目は真っ直ぐにベリルを見返す。

「ええ、お願いします」

「私は高いぞ」

「構いません、信頼出来る相手であれば。一生掛けてでもお支払いします」

決意のこもった眼差し。華奢な体格から16才くらいかと思っていたが、もう少し年齢は上かもしれない。

「一生掛かる程にはふっかけるつもりはない」

ベリルはそれだけを彼女に答えて、再度車を発進させた。


しばらくして……。

後を付けてくる車が二台。それをバックミラー越しに確認すると、ベリルはニナに声を掛けた。

「しっかり掴まっておけ!」

直後、車が加速する。追従して追いかける車もスピードを上げてきた。

さて、逃げ延びた後はどうするか? 状況確認の為にも、落ち着ける場所で彼女に話を聞く必要があるな。

ベリルがそう思案している間に追跡車は左右を挟み込む形で展開した。

それを待ち構えていたかのように彼は、ウィンドウを開きながらフルブレーキを踏む。ディスクブレーキの激しい金属音と共に、左右の車の背後を取った。