東京心中

初めて話すこの目の前人を疑う事もなく、危なそうなバイトをやる今思えば何故そうさせたのだろう
そして 「明日から出来る?」「はい、何時頃からですか?」「五時にここに来てくれたら、後はこちらがセッティングするから、それとお客さんの紹介料を五千円用意して下さい」「えっ、そんなのがいるんですか? 」「 顔見せして、成立したら払ってもいいし、皆先に払う子が多いけどね、どうする?」とテンポよく話され「わかりました、用意して来ます」
帰りの電車の中で窓から外を見ていたら、すっかり真っ暗で、沢山の家やマンションには暖かそうな灯が灯っていた。少し大人びた格好に、危なげな夜の仕事というシチュエーションに酔っていたのかも知れないが、電車はさっきまでいた梅田を背に、家に向かって走っていた。そこは梅田とは違い、虫の声と家々の網戸から漏れる、野球のナイターの音や、食器を片付ける音、遠くで聞こえるロケット花火の弾ける音が聞こえ、何時もの自分に帰った気がした。