「…今ので傘は売り切れましたが、お客様は大丈夫ですか」

仮に、外で槍が降っているのなら、大丈夫じゃない。
そもそも、槍が降っていれば、傘など役に立たないだろう。

いずれにせよ、槍が降っている気配はなく、ただただ月明かりが街を照らしている。

「傘は、いりません。
何も降っていないし」

「…そうですか。
でも、気をつけてくださいね」

私は、シュークリームの入ったレジ袋とカバンを持ち、店員に見送られながら、コンビニを出た。


少し、カバンを持つ手がかゆかった。

それと、やけに犬の遠吠えが多い気がした。


…私が覚えているのは、そこまでだ。