光志はゆっくりとあたしの髪を一度だけ撫でる。 「本当はあの時手を離してやるべきだったのに」 あの時って… あたしが別れようって言った時のことだろう。 「光志…やめてよ。そんなこと言わないで」 我慢していた涙が落ちそうになって、下唇を噛む。 「ごめん」 「やめてってば」 そう言って光志の体を離すと光志が泣いていた。 「それでも…好きなんだ」 そう言った光志の声に、泣き顔に、暖かさに堪えていた涙が溢れる。 「ごめんな」 「あたしもごめん」 「好き」 「うん、あたしも」