「喜ぶ」 「なにそれ」 「なんで?」 「適当過ぎ」 ブーッと唇を突き出して不貞腐れて見せる光志は30過ぎには見えない。 「だって実際に離婚なんてしないでしょ?」 そして、あたしの言葉に光志は目を見開いき少し哀しそうな顔をした。 「…うん、そうだね」 知っていたよ。 光志は絶対離婚なんてしない。 だって見たんだもん。 奥さんに笑いかける夫の姿も、娘を愛しそうに見つめる父親の姿も。 この目で見たの。 大切なんでしょ? あの家族が。