あたしはその場に立ち上がる。
光志もそれを見て慌てて立ち上がった。
すると、おじさんは
あたしたちに気づいて近づいて来た。
「杪…か?」
「はい」
あたしは短く、
だけど、はっきりと答えた。
おじさんはニコッと笑い、
「会えて嬉しいよ」
と、言った後
ふと光志に目をやった。
「えっと、彼はどなたかな?」
そう言われて、
光志は少し戸惑ったようだった。
正直、あたしも返事に困った。
"彼氏"と、言っても
嘘ではないが、浮気相手であるあたしの口からは、少々言いづらいし、年の差的にもそうは見えないだろう。
「…少なくともあなたよりは信用してる人です」
あたしがそう答えると
光志は驚いた顔をした。
おじさんは
優しく笑って「そうか」
と、言った。

