「今更、父親面なんてするつもりはないさ…」 受話器の向こうから聞こえた、哀しそうな声。 「ただ、一度でいい、一度でいいから…」 泣いているのだろうか。 言葉がつまっている。 「君に、会いたいんだ」 それは、知りもしない父親の言葉。 あたしを捨てた男の願い。 「会ってどうするんですか?」 冷静に振る舞うが 心は動揺している。 「杪、君と笑いたい…」 なぜだろう。 涙が溢れそうになる。 記憶にないパパ。 でも、それでも 本物のパパなら… 会いたいと願っているなら あたしも会いたい。