お酒はそんなに強いほうではないが、居酒屋の雰囲気が好きだ。

あの、オープンな感じ。

ギスギスした社会から切り離された空間。


この機会に、ストレスを発散してしまおう。


そうだ、レンタルビデオショップにも寄ろう。


一人の夜を満喫するぞ。


「あら朝田さん、まだいらしたの。」


「!!……藤村さん」


上機嫌で電気を消していたら、清掃員の藤村早百合に声をかけられた。


「一人でニヤケちゃって、愛人とデートでもなさるの?」


…どうして自分は不倫系のいじりをされるのだろう。


自分が何をしたのだというのだ。


「藤村さん…あなたまでそんな事…」


「あらっ図星!?」


「…俺、帰りますね」


対応がめんどくさくなった樹は、そそくさと会社を離れた。