「…あったあった」
書類を見つけた和尋は、ぐしゃっと鞄に押し込んだ。
「さて、俺は帰るよハニーのもとへ」
ハニー、とは奥さんの事だろう。
沖田夫妻はラブラブで、いつもこの調子だ。
「はいはい…お疲れ様でした」
呆れた樹は、てきとうに返事をした。
「お前もそれ飲んだらさっさと帰れよ。もう6時だ、社員に残業させたら俺が社長に怒られんだぞ」
御蔵玩具の社長は、子どもが5時に家に帰るからという訳の分からない理由で、どの部も勤務時間を5時までと定めている。
そのため、キャンキャン騒ぐ小学生達と並んで帰宅しなければならない。
それが嫌で、毎日コーヒーを飲んでから帰ることにしているのだ。
