誰も居なくなったオフィスの窓辺で、砂糖とミルクのたっぷり入った甘いコーヒーを飲む。 仕事終わりの、樹の日課だ。 「はぁ…」 窓の向こうの夕焼けを眺めながら、浅く溜め息をついた。 大手おもちゃメーカー御蔵玩具の製品開発部で働く樹は、最近スランプだ。 おもちゃのアイデアが浮かばない。 浮かんでも、制作コストを抑えられない。 だからといって、妥協はしたくない。 …その繰り返しだ。