そう。

あたしと連は…毎朝、みんなが来る前の20分間、1on1をしている。

体育館が、シン…となる。



リングとあたしの間には、腰を低くした連。

バッシュの音と、ボールのバウンド音しか聞こえない。

あたしは、ボールを前でチェンジした。

連がすぐディフェンスについてくる。

体をくならせ、無理に押し込む。

すかさず、連がブロック…するのは、分かってる。

あたしは、体を後ろに退けた。

そして、ジャンプする。

フェイクからの、ジャンプシュート。

あたしの手から放たれたボールは、弧を描くようにして、真っ直ぐに、リングに引き寄せられた。

…完全に、邪魔されなければ。

あたしが安心したその時、連の長い手が伸びてきた。

その手が、思いっきりボールに当たる。

それが、あたしの顔面めがけて振ってきた。

 「ぎゃっ!?」 

あたしは、後ろにしりもちをついた。

 「いっ…たぁ…。」 

連が、駆け寄ってくる。

 「ゴメン!大丈夫か!?」 

伸ばされた手をつかみ、ゆっくりと立ち上がる。

力がすごくて、あたしの小さい体なんて、ヒョイッと簡単に持ち上げてしまった。

そのせいで今度は、体が前に傾いた。

 「きゃっ…。」

咄嗟に、連の手が伸びる。

あたしは、連の腕の中に、すっぽりと収まった。

 (こ、これは…抱きしめられてたり…する??) 

あたしの頭が、ちょうど連の胸の部分で、連の鼓動の音がする。

連の鼓動は、トクトクとゆっくり動いている。

反対にあたしは、心拍数が上がりまくっている。

 「ご、めん…。ありがと…!!」

 「おう。…あぶねーから、今日はシューティングだけにしとくか?」

 「そ、だね…。」

あたしは、連の顔がまともに見れなくて、ただ下を向いていた。