…ボンッ、ボンッ。

床にドリブルをつくと、素直にボールが返ってくる。

ただ今、午前7時。

みんなは、たぶん今起きたところでしょう。

でも、あたしは今…学校の体育館にいる。

そう…自主練ってやつ。

あたしは、ゴールの前に立ち、向き合う。

あたしの手から放たれたボールは、きれいな円を描き、ゴールへ入った。

(…よし。)

 「一人での、朝練終わり!」

これからはみんなが来て、一緒に朝練するんだ。

 「ひな!!」 

ふと、目の前で声がした。

ポンッ。

投げられたものをキャッチすると、ポカリスウェットがあたしの手に握られていた。

 「お疲れ!」

その、低い声の人は、この部で一人だけ。

近づいてくる、大きなシルエット。

 「…連。」

その瞬間、あたしの顔が、満面の笑顔になる。

 「また、やってんのかよ?」

 「うん!気持ちいいよ?」

二人で、体育館の床に座る。

朝日の差し込む体育館で、二つの影が肩を並べる。

…とはいえ、かなりサイズの違いはあるけど。

 「相変わらず…背高いね。」

と言って、振り向いた笑顔がまぶしい。

彼は、身長178㎝。

うちの部で、一番大きい。

そして、努力家。

何より…あたしの、好きな人。

…木下連。

 「お前は、相変わらずちっちぇよな~。」

 「これは、今から伸びるんです~。」

ほっぺたを膨らましながら、怒ってみる。

 「ホントかよ~?」

毎朝、毎日のように会話する言葉。

あたしは、身長152㎝で、この部で一番小さい。

だから、連に対して、好きな気持ちもあるけど、憧れも同時にある。

(…今日も、カッコいいな…。)

連は、モテる。

休み時間は、告られることも少なくない。

部活でも、先輩にすごく人気がある。

こんなに小さなあたしだけど…。

連を好きな気持ちは、誰にも負けない自信がある。

あたしのちっちゃな体にある、大きな愛…。