もう一度 君に会えたら

「おじゃましまーす。あ、涼しい」


部屋に入るなり浩子の表情が少し和らぐ。

婆ちゃんに気を使っていたんだろうか。


「何もないから、適当に座ってろ」


俺の部屋は本当に物が少ない。

急な引越しだったから無理もないが、ベットと服を置いたシルバーのシェルフとミニコンポがあるだけ。

グラスを置くテーブルなんてない。

床におけばいいだけの話。


「これ・・・」


枕元に置いた瑶の本に手を伸ばす。


「彼女の?」


そうだけど。俺は隠さず言う。

ふーん、素敵な趣味ねーと乾いた声で言い、興味を失ったようにその場に座った。

それからタケの話やら学校の話をマシンガンのように話始める。

タケは相変わらずオンナっ気もなくバイトに精を出してるようだった。