少しの沈黙の後、口を開いたのは理衣だった。
「ミツルはいつも自分の事ばっかじゃん。相手の気持ち考えろって注意したよね、昔」
「は?」
「病室で待つ瑶の気持ちは考えた事あるの?」
病室で待つ、あいつの気持ち?
今は関係ない話かもしれないけど、そう前置きし話し出す。
「ミツルが転校してくるずっと前にね、年上の彼氏がいたんだけど。
こっちが照れるくらいのめりこんでてさぁ。
でもその彼氏ってのが酷い男で、合鍵を瑶に渡して毎日部屋で待つように言ってたわけ。
放課後はピョンピョン跳ねながら嬉しそうにスーパー寄って彼氏んち行って
で、彼氏が帰ってくるまで一人で部屋で待ってた。
帰りが遅いのは、勉強が忙しいから
瑶に何かプレゼントするためにバイトしてるから
だから健康管理は私の仕事なんだって嬉しそうに。
でも、現実は違ったわけ。
瑶の他にも何人も女がいて、瑶は彼女じゃなく家政婦だった。
遊んでる間に食事や掃除してくれる都合のいいガキだったって事。

