きちんと、話をすれば良かったんだ。
今までも、自分の言葉で自分の意見をぶつければ良かったんだ。
簡単な事なのに、気が付くのにすごく遠回りをしてしまった。
「それと…せっかく帰ってきたんだ。友達の成瀬君に会って帰ったらどうだ」
親父の口からタケの名前が出るなんて。
今度は俺が驚きの眼差しで親父を見つめる。
言葉が出ない位驚いたから。
そもそも、タケの苗字を親父が知ってること自体ビックリなのに。
「成瀬君、いつだったかお父さんに会いに来たのよ」
固まった俺の肩に手を乗せ、母親はさらに驚くべき言葉を伝える。
『アイツ、今すごく大変で混乱してます。もし、充が助けを求めてきたら…俺が言うのも変ですけど手を貸してあげて下さい。お願いします』
そう言ってね、お父さんに頭下げて帰ったのよ、と。

