もう一度 君に会えたら

それは低い低い声だった。

あーやっぱし無理かぁ…諦め半分で顔を上げる。

相変わらず親父の表情は硬い。

仮面かっつーの。


「やっぱ、今さら無理だよなー。調子良すぎるもんな」


顔ではおどけて見せたものの、心は押しつぶされそうに窮屈を極めていた。


「お前は、人の話を聞かずに答えを決めるクセがあるな。誰も無理とは言ってないだろ」


意外な一言だった。

動揺を隠せずにいると、親父は運ばれたグラスに視線を落として呟くように言葉を続ける。


「やっと、自分で道を見つけたか…。あっちにやった事は間違いではなかったかも
知れないな…」


自分で道を?

間違いではなかた?


「親の為に頑張る、それも良しだろう。でも俺は自分の為に頑張ってる姿か見たかった。夜遊びやバイクに乗り出したときは俺もお母さんもパニックになったよ。環境が変わることで…違う友達と出会うことで何かを見つけてくれればと思ってお婆ちゃんに相談して預けたんだ」