「あ、病室・・・」
ここまで来て病室を知らないことを思い出し、慌てて歩いてる看護婦を捕まえる。
「すみません、大久保 瑶の面会は大丈夫ですか?」
捕まえた看護婦は首をかしげてニッコリ笑うと口を開いた。
「大久保さんのお見舞いね。落ち着いてるから大丈夫ですよ。この棟の3階301号室だから、行ってあげて」
俺は丁寧に頭を下げ、階段を駆け上がる。
久しぶりに会う嬉しさと緊張感が腹の奥から胸に突き上げるような感じだ。
婆ちゃんが花を持たせなかったら、来るタイミングを見失ったまま夏が終わっていたかもしれない。

