【短編集】砂糖をかけたみたいに









「王子っ…」

奥のバラ園から姿を現したのは、この国の王子。

昔、父親に連れて来られるたびに彼と遊んでいました。

シェリンにとっては弟のような存在でした。







「シェリン、久しぶり。会えて嬉しいよ。どっかで話さない?」

優しい笑顔をしながらシェリンをエスコートしてどんどん歩いていく王子。

「あ、あなたはダンスホールにいなくていいの?」

ちょっとどきっとしたシェリンは慌てて話題を出しました。

「いいよ。君の所のお姉さん方のアプローチがすごくて…。香水きっついし…。」

王子は本当に嫌そうに眉間に皺を寄せました。

その気持ちがよくわかる彼女は首を何度も縦に振りました。

そうして愚痴や最近あったこと、噂話など色んな話をしていると上からワルツが聞こえてきました。

彼らが座っているベンチはダンスホールにつながるバルコニーでした。

「踊りませんか?」

すっと差し伸べられた手に自分の手を載せてシェリンは微笑みました。

月明かりの下、かすかに聞こえるワルツを踊るふたり。







夢のような、時間でした。





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