【短編集】砂糖をかけたみたいに










ディリアスは着ていたローブの中から小枝ほどの杖を取り出して軽く一振りしました。

すると一瞬にしてシェリンは淡い水色のドレスに身を包み、ガラスの靴を履いている姿に変わりました。

「ん、上出来じゃん。久しぶりに魔法使っちゃった」

にっこり笑顔で話すディリアスに抱きついてありがとう、とシェリンは何回もお礼をして城まで駆け出そうと――

「ちょっと待った。早すぎ。説明してからうちの馬車で送ってあげる」

早く行きたいシェリンは口を尖らせましたが大人しく聞くことにしました。

「魔法は今日のうちしか効かないから12時になる前に帰ってくるのよ?もし過ぎたらまたあのぼろ服でみんなの前に立つことになるからね?」

わかった、と大きく頷いてシェリンはディリアスに送ってもらい王城に辿り着いた。








「12時前だからねー!忘れんじゃないわよ!?」

そんな声を背にシェリンは王城の庭を歩いた。

小さなころはお父様に連れて来られていたけれど来るのはもうずいぶんと久しぶりね。

彼女は懐かしさのあまりダンスホールに入る前にふらふらと庭園を歩いていました。








「シェリン…?」





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