【短編集】砂糖をかけたみたいに









「邪魔してる」

ベットに座っている赤毛の青年はそう言うと読んでいた本を閉じました。

「あら、早いのねルギオン。仕事はもういいの?」

「今日は早めに終わったからな。…大丈夫か?」

ルギオンはシェリンの顔を窺いながら聞きました。

「そんなに心配しなくたっていいわ。もう3ヶ月たったのよ」

彼女は笑いながらいいますが、ルギオンには痛々しく見えました。

「そうか…」

「あ、ねぇ!新作の靴っていつできるの?」

「あと一日二日もすればできる」

「本当!?出来たらまず私に見せてよ!」

「しゃーねぇなぁ…」






彼はシェリンの幼馴染で、街の靴職人。

身分は違えどふたりは昔から仲がよく、今でも毎日のようにシェリンの部屋へと遊びにくるのでした。

彼ともう一人の幼馴染と過ごす時間が彼女にとって唯一の癒しの時間でした。






「あ、そういえばなんかこの国の王子が舞踏会を開くって今靴の注文が多いんだよ」

「まぁ宮廷舞踏会じゃ貴族はみんな着飾るわ。仕事が増えていいじゃない」

「でも多すぎて今日は早めに店仕舞いしたんだよ。ま、俺はまだ暇だけどな」

「早く自分の靴売ってもらえるように頑張ってよ」

「わかってるよ。シェリン、じゃあな」

彼はベットから立ちあがるとシェリンの髪をくしゃっと撫でてから窓の外へと消えました。





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