逃げられないと悟ったのか、大人しくなった。

まぁいくら俺が男でも暴れ続けられたら大変だからな。

ちょっと安心しつつ、彼女の背中をぽんぽんしながらまた聞いてみた。

「どうしたよ?言ってみ?」







彼女が肩に額を預けてきた。

どくり、心臓が一打ち。

抱き締めててよかった。

奏の顔見れないけど、俺の顔も見られないから。








「っ・・・頼られるのもうやだ・・・。そんなに"いい人"じゃないのにっ・・・!」

途切れ途切れに聞こえた声は紛れもなく彼女の弱さで。

言ってくれたことが嬉しかった。

「あたし、だって、・・・頼りたいときくらいあるっていう、のに・・・」

今まで、こんなに曝け出した人、いないはずだから。






声が嗚咽に変わっていく。

この期に及んでまだ押し殺す奏。

その度に腕の力を強めた。






.