日差しが照りつける中、
私は強く強く祈っていた。

県大会出場をかけた、
大事な大事な大会。
そんなトキ、ピッチャーを任されて、
ちょっぴり浮かれてた拓真を、
キツく叱ったことがあった..

「拓真っ・・そんなんじゃダメだよっ!
 勝てない・・。それじゃ勝てないっ・・・
 拓真が投げる球に、みんなが注目して、
 拓真を信じてついてきてくれてるのに・・」


野球のことを何も知らないし、
拓真なりのプレッシャーはあったはず。
そんなの関係無しに、頭ごなしに
怒鳴りつけた私....。

拓真はびっくりしてた。

でも、その後笑ってくれた、

【ありがとうっ】って...


「ストラーイクッ!!バッターアウト!!」

9回の裏・・。
審判の声と観客席の歓声が、
大地を大きく震わせた。
そして、拓真の雄たけびも..。

私は思わず飛び跳ねた。

笑顔で戻ってくる選手たち。

「拓真っ!」

嬉しさいっぱいの声は、
拓真に...届かなかった..

拓真に渡そうと、
手に握っていたタオルへの
力もスッと弱まった気がした。


友達と嬉しそうに肩を組んで、
マネージャーの女の子と
ハイタッチを交わす拓真。

「・・・っ・・」

フェンス越しの手を離し、
タオルをポケットに押し込めると
後ろを向いて歩きだした。

拓真の笑顔を背にして歩くのは、
めったにないよ...?

こんなにお互いが喜べる時に、
拓真への声は届かなかった。
逆に、別の女の子と喜んでた。

これに...
ちょっとガッカリしちゃう私は、
欲求不満かな・・。

自転車置き場に行って、
拓真の自転車のかごに
タオルを入れておいた。

「お疲れ様」

ヒトこと言い残して、
熱いおひさまに背を向けた。