「フルコース……」


呟いて、意味を飲み込むと、ついニヤニヤして……

かずまとつないでいる手に自然と力が入ってしまう


かずまがバカにしたような目でこっちを見てるのがわかるけど


……止められない


だって、だって、



「フルコースなんて…はじめて」



かずまが口の端をつりあげた


「フルコースの意味わかってんのかよ?」

「アペタイザーからデザートまででしょ?」

「そ、最後のデザートまで」


おかしそうに笑いを咬み殺すかずまを一瞬不審に思ったけど

窓の外から見える景色に気づいたアタシは意識を全てそっちに持っていかれてしまった



ウエイターさんが引いてくれた椅子に腰掛ける


「俺と二人だから、酒飲んでもいいぞ」


「いえ、やめときます」


手渡されたメニューを見てもちんぷんかんぷんで、困った顔でかずまの顔を見ながらパタンととじた


かずまはウエイターさんと笑顔で何か会話を交わしている


景色を見たり、店内を見渡したり

そわそわキョロキョロして、女子友に自慢するネタを頭に叩き込もうとしているアタシを、いつのまにかかずまが頬杖をつきながらじーーっと眺めていた


「落ち着けば?」


って言われて、しゅんとやわらかい椅子の背もたれにもたれかかると、今度は自分の着ている服が目に入った