彼が更に一歩よってきて、アタシは壁際にぺたんと背中をつける


「前もそうだったけど……

自分の身くらい守れよ」


……わかってる


「ホステスだろーが」



……わかって、る


でも、今言わなくても


不本意に胸が詰まる

新田くんに助けてもらって気が緩んだのと、彼の言葉に傷ついたのと、なんだかもう説明のつかない涙がにじむ



「泣くな」

「泣いてない」


悔しくて強く言い返す

すると、それは威力を増して跳ね返ってくる


「男に触られても笑ってる仕事してるくせに、今更純情ぶんな」



キツ…………



アタシは何も言わずに自分のカバンをつかんだ

カバンの中に石でもつめたんじゃないかと思うくらい重い

(店に、行かなきゃ)

あ……でも助けてもらったお礼は言うべき??


ドアに手をかけて、ちょっとだけ振り向くと


いつのまにか真後ろに迫った姿


「あの……あ……」

言葉を出しきる前にドアにかけた手をつかまれた