電話を耳にあてたまま目で(こっち)と合図され、おとなしくついていく


片手に持っていたパンプスをカバンに突っ込もうとカバンを開くと、中の小ポケットから切符が少し顔を出していた


がーーーーーーん!!



前を歩く新田くんが携帯を耳に当てたまま振り返る


アタシはニコッと愛想笑い


カバンを両腕で抱えて気まずさをごまかす


不審げな目をする彼


電話がつながったみたいで、アタシから一旦目がそらされる


「ああ、今A駅にいるから、迎えの車寄越して」


迎えの車??


その後二言三言返して電話を切った新田くんが再びアタシに視線をむけた



おそるおそる切符をカバンから取り出して…

怒られないように愛想笑いを続けながら……

わざとかる~いノリで……


「切符、あった……」


……


その場しのぎの笑顔が彼に通用するわけもなく


一瞬目を見開いた後、みるみる不機嫌な顔に変化していくのを見て、また背中に寒いものが走った


「てめえ……」


“あんた”から“お前”になって、ついに“てめえ”まで落ちちゃった


アタシの手から切符を引き抜くと、ぱしっとそのままおでこをはたかれる

化粧直ししてからずいぶんと時間がたってすっかりテカッたアタシのおでこに切符がはりついた