「別に……そういうわけじゃないよ?」


俺は更に体を低くして車内に顔を突っ込むと「ふ~~ん」とちひろの顔を眺める


「……何?

欲求不満だからってアタシに八つ当たりしないで」



……欲求不満、だと?



「今でも小笠原くんとたまにランチしたりしてんの?」

「小笠原くん?……ああ、あの一年生の……っ」



語尾が消えていき、ちひろが口をつぐんでしまった



「小笠原くんとメアド交換したんだってー?」

「メアド交換って、あれは、ちゃんと理由があって」



……交換したのか!

かま、かけただけなのに




かずまの声が静かに底から這い上がってくる


「生徒とメアドを交換するちゃんとした理由ってのを、聞かせてくれる?」






「あ、じゃあ、かずまとごゆっくり……」

「ちょっと長瀬く」


ちひろの言葉を遮るようにドアをバタンと閉めた



満足感にほくほくしながら車のそばを離れる



ざっまーみろ、ちひろ


俺のこと欲求不満呼ばわりするからだ



豪奢な門扉をくぐって角を曲がる

夜中だし、通る車も少なくて静かな住宅街



怒られてんのかな~

もしくは、怒ってかずまに追い返されてるかもしんねーな~




……あれ?

それならかずま、俺と遊べんじゃん