人が絶えない駅前で、ルリちゃんが柱からチラリと顔をのぞかせている


「あ、あれ、あの黒の車がお父さんの車です」


俺もルリちゃんの頭の上から覗き込んだ


……キョロキョロしているメガネをかけた真面目そうな中年男が確かに運転席に座っている


「じゃあ、待ってるみたいだから早く行った方がいいよ」


そう言って、二人でまた柱の影に身を隠す



「はい、なんか……今日は、ごめんなさい

ありがとうございました」


「うん、またね」


「あの……アタシ」


「???」



ルリちゃんが俺の胸元に視線を下げて、またハンカチをもみくちゃにし始めた



「どした?」


体を折り曲げて彼女の顔を覗き込む




「あの……アタシ、あれ、好きです」

「あれ?」

「あの、手を広げて、ぎゅうぎゅうしてくれるの……」





抱っこしろってこと?

……めっちゃ人いっぱいいるんですけど




「ヘヘ」って笑うルリちゃんを見ていると、自然に手をひろげてのばしてしまった




「はい、どうぞ」



っていざ実行してやるとルリちゃんが照れて、首をかしげている



俺はそのまま彼女を腕の中に閉じ込めるように抱きしめて「照れるな照れるな」とぎゅうぎゅう締めつけた


腕の中でクスクス笑っているから、なんだか俺までこそばゆい