「俺の名前呼ばなきゃ、意地悪するよ?」

「……先輩、あの」


……うすうす感づいてはいたけど、思ってた以上に天然の不思議ちゃんだ、この子


「人の話きーてんのかよ」

「き、聞いてます」


いや、ウソだね


「な、コート脱がねーの?」

「あ、……はい」


体を起こしてやると、俺の顔を窺うルリちゃん

不安にさせないようににっこり笑って、「仲直りってことでいい?」と確認した



「……うん」



子供みたいに照れた表情でうなずく彼女

むしょうに……触りまくりたい


両手で頬を挟んで、おでこ同士をくっつけた



「もう、ナンパしない」

「アタシも……ついていきません」

「ん」



彼女のコートの前を開ける手伝いをした

パステルピンクのカーディガンにはパールのボタンがあしらわれていて、外してほしそうに光って見える


いや……ねーな

彼女との初体験がカラオケボックスなんて、ありえねーし

コートから腕を抜く彼女の横顔が妙に女っぽく見える

今ちょっとでも先に進まなきゃ、またハードルが高くなる気もする

この場合……とか、あの場合……とかあらゆるシミュレーションを一瞬でしようとして、無意識に指先をこすり合わせた




こちらを見た彼女の「へへ……」と笑う間の抜けたテンションに、俺のこれから先の苦悩がちらりと垣間見えて眉を下げた




目論見とか計算とか、全部通用しねー

俺のペース、乱されっぱなし……