店が終わって、アタシはカバンをとると外へ向かった

一緒に帰ろうって言ったけど……そういえば返事聞かなかったな


待ってくれてるのかな


この間“気持ち悪い”“触らないで”とか言っちゃったし……ね


待ってないかも


建物を出ると、少し冷たくなった秋の夜風が足元を吹きぬけていく


かずまは腕を組んだまま壁にもたれて待ってくれていた


「おまたせ、今日はアタシ車だよ」

と車のキーを目の高さまであげて揺らした


車に乗り込むと、まるではじめてかずまを車に乗せた日のように静まりかえる車内

空気がめちゃくちゃ重い


エンジンをかけて、ゆっくりと車を発進させた


軽く手をあげて車の流れに割り込ませてもらう




「……不機嫌、だよね?」


耐え切れずに聞くと「ああ」と冷たく認められてしまった


「そっか」


と返すとジロリと横目でにらんでくる



「えっと……何に、怒ってる?」

「そういう風に聞くってことは、いくつか理由思い当たってるんだろ?」


……こわ


「あ、アタシだって……」

「どうせ小沢のことだろ?」


どうせって……そんな風に思えないし