わざと忙しくして学校での時間をやり過ごす

学校で会ってしまう気まずさより、店でまだ顔を合わせる方がいい


なのに、週の中頃ということもあって店もそんなに忙しくならなかった


やっぱりかずまと顔を合わせてしまったけど、少ない客にたくさんの女の子が席につくから自然とハイテンションな店の空気に救われる


今日はこのまま楽に終わりそう…なんて楽観視していると、遅い時間になって前田さんがあらわれた


そうなるとアタシは前田さんの席へ行くことになる



「この間は飲んじゃってごめんなさい」


アタシの第一声

前田さんは変わらず優しく微笑んでくれた


「楽しかったからいいじゃない……まあ、あの後連絡がなかったのが残念だったけど」


といたずらっぽく笑った

水割りをつくるアタシの横顔に近い距離で話しかけてくる


「お酒を飲んだマキもかわいかったよ、今日も…飲む?」


最近めっきり冷えがちな心が少しあたたまった


「彼氏と仲直りしたかどうかはわからないけど……僕のところにおいでよ」


「え?」

マドラーで混ぜたお酒をさしだしたまま前田さんの顔をうかがった


「結婚なんて堅苦しいことは考えなくていいからさ、一緒にいると、僕たち穏やかに暮らせると思わない?」


返答に困ったまま少し座りなおして、前田さんに体を向ける

すると、彼は少し首を傾げてアタシの手を取った


「もちろんこの仕事を続けてくれても構わないし、もし辞めるんだったら全面的に協力するよ?」


絡まった糸をほぐせなくて、しゃがみこんでしまっていたアタシの頭上から降ってくる、春の陽気のようなぬくもり

かずまがアタシの飲み物を運んできて、話をきいていた事にも気づかないくらい


アタシの頭の中はボーっと思考を停止していた