二人の付き合いはずっと続いた。30歳を過ぎるころになると、双方の親が、いい加減結婚したらどうだ、というようなことを言ってくるようになった。絵里はそれにうんざりするようになり、結婚しようか、と雄二に切り出した。


 こうして二人は結婚をした。ところが子供が出来ないまま40代になってしまった。結局二人は子供を諦め、マンションを購入した。都心まで電車で1時間もかからない場所に、二人は生活の拠点を移した。

 翌日、絵里は仕事が休みだった。雄二も、学校での用事が昨晩で大体片付いていたので、二人は1日じゅうダラダラと過ごしていた。

 夕方、小池からメールが来た。

小池とは地元の高校、そして大学も一緒で、社会人になっても常に付き合いのある友人だった。メールの内容は、沖縄に転勤になっていた大学時代の共通の友人、山口が久しぶりに上京するというので新宿あたりで呑まないか?というものだった。


 日程的に「明日」の夜6時くらいからが良いとのことだった。雄二は特に用も無かったので参加と即答した。







 「本当に大丈夫よ」

 絵里は玄関先で雄二に言った。絵里はゆうべから体調を崩し、今日は仕事を休んだ。雄二は昨日の小池の誘いで、これから新宿へと呑みに行くところだったのだが、行くことを躊躇った。

 「小池君によろしく伝えといてね。今度は私も誘ってと」

 「わかった、なるべく早く帰ってくるから、暖かくして寝てなよ」

 そういうと雄二はマンションのドアをゆっくり閉めた。


 新宿西口の地下通路を通り、約束の場所へと雄二は足を運んだ。新宿中央公園の少し先の雑居ビルの5階、大学時代から行きつけの呑み屋が今でもそこにあるのだ。ほぼ時間どおり、雄二と小池と山口ともう一人計4人の男が集まった。   

 「絵里がちょっと体調くずしちゃってさ、悪いけどあまり長居はできないんだ。すまん」


 雄二は席に着くなり3人に向かって謝った。

 3人は気にするな、と妻の絵里の容態を気遣ってくれた。しかし、呑み始めるとすっかり時間を忘れ、昔の話やら近況やらと盛り上がり、あっという間に時間は過ぎていった。