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「……池!小池!!」
振り向くと、そこには山口がいた。
「もう行こうや」山口は小池に出口へ向かおうと顎で促してきた。葬儀場の駐車場に停めてある車に乗り込んだ二人はしばらく無言だった。
運転席の山口は、駅は右だっけ? と前かがみになり、通過する車を目で追った。小池は「ああ」とだけ答えた。
しばらくし、踏み切りで車が停車したとき、小池が沈黙を破る。
「見てらんなかったよ」
山口は「俺も同じだ」と言った。
ダッシュボードの上を拳で軽く叩くと、はき捨てるように小池は話し始めた。
「11日の朝方、絵里ちゃんから連絡があった時は、雄二は10時に店を出たから、もう帰ったと思ってたよ、としか言えなかった。だけど、朝まで何も連絡がない、絵里ちゃんからも連絡がつかない、しかも午後になってもだ。俺は焦ったよ、とにかく警察に相談したほうがいいんじゃないかって言った。そして、俺も、もちろんお前もだが、必死になって知りうる限りのところへ連絡を入れた」
小池はフーっと大きく息をついたあと、「まさかな……」と髪の毛をかきむしった。
山口はすかさず、お前や俺たちのせいでは無いだろ、あいつはそんなに酒も呑んでいなかったじゃないか、と言うが、「だから、やりきれないんだよ」と小池は言葉を遮った。
