雄二は夜空を見上げた。
鼻で息を大きく吸い、大きくはいた。
「これでいいんだ、17歳の絵里を巻き込むわけにはいかない。俺はもう、2010年には戻れないんだ。ここでは生きていけないんだ」
雄二は、資材置き場のその一角から少し離れてみた。すると、見覚えのあるタバコ屋があった。ちょうどそれまでは死角になっていて気がつかなかったのだ。
昔、飲み屋にタバコは置いてなかったから、ここに買いに来てたよな。
資材置き場までもどると、隣に立つ、レンガ色の雑居ビルを見上げた。
雄二の中である一つの考えがわき上がった。
あの時、俺が警察官に起こされて向かったのは、十二社通りだったわけだ。つまり、この資材置き場は……、俺たちが呑んでいた居酒屋の入っていたビル? いやまだ、建設前の段階だな。
現代とはだいぶ周辺の様相が変わっていて、すぐには気がつかなかったのだが、そうやって改めて周囲を見渡すと、見覚えのある街並みだった。
鼓動が速くなるのがわかった。
そして同時に、居酒屋を出て非常階段を下りていた時のことを思い出した。
「あの時の記憶は、たしかに今でも断片的だ、でも、もしかしたら……」
雄二はレンガ色の雑居ビルの非常階段を、ゆっくりと昇っていった。3階部分で雄二は手すりから下を見た。あそこで俺は倒れていたのか。
雄二は階段に腰を下ろし、長い間そのままでいた。胸の中に洪水のように去来する考えをまとめていたのだった。
「まさかとは思うが、俺は手すりから落ちた時にタイムスリップをしたのか?……ということは、今ここで同じ場所に飛び込んだら元の世界に戻れるのか?」
雄二は大きく首を左右に振ると「いや戻れなかったらどうなる、俺は死ぬな」
そこまで言うと、雄二はクククと薄ら笑いをした。
【おい、雄二! 死ぬ気でいるんならそれくらいやっちゃったらどうだ?】
雄二は心の中で自問した。足がガタガタ震えた。
鼻で息を大きく吸い、大きくはいた。
「これでいいんだ、17歳の絵里を巻き込むわけにはいかない。俺はもう、2010年には戻れないんだ。ここでは生きていけないんだ」
雄二は、資材置き場のその一角から少し離れてみた。すると、見覚えのあるタバコ屋があった。ちょうどそれまでは死角になっていて気がつかなかったのだ。
昔、飲み屋にタバコは置いてなかったから、ここに買いに来てたよな。
資材置き場までもどると、隣に立つ、レンガ色の雑居ビルを見上げた。
雄二の中である一つの考えがわき上がった。
あの時、俺が警察官に起こされて向かったのは、十二社通りだったわけだ。つまり、この資材置き場は……、俺たちが呑んでいた居酒屋の入っていたビル? いやまだ、建設前の段階だな。
現代とはだいぶ周辺の様相が変わっていて、すぐには気がつかなかったのだが、そうやって改めて周囲を見渡すと、見覚えのある街並みだった。
鼓動が速くなるのがわかった。
そして同時に、居酒屋を出て非常階段を下りていた時のことを思い出した。
「あの時の記憶は、たしかに今でも断片的だ、でも、もしかしたら……」
雄二はレンガ色の雑居ビルの非常階段を、ゆっくりと昇っていった。3階部分で雄二は手すりから下を見た。あそこで俺は倒れていたのか。
雄二は階段に腰を下ろし、長い間そのままでいた。胸の中に洪水のように去来する考えをまとめていたのだった。
「まさかとは思うが、俺は手すりから落ちた時にタイムスリップをしたのか?……ということは、今ここで同じ場所に飛び込んだら元の世界に戻れるのか?」
雄二は大きく首を左右に振ると「いや戻れなかったらどうなる、俺は死ぬな」
そこまで言うと、雄二はクククと薄ら笑いをした。
【おい、雄二! 死ぬ気でいるんならそれくらいやっちゃったらどうだ?】
雄二は心の中で自問した。足がガタガタ震えた。
