酒を呑みながらフラフラと歩いていた雄二は、目的の場所に着くと足を止めた。
そこは、ほんの2日前、警官に声をかけられて目を覚ました場所だった。最後にもう一度確認しておきたかったのだ。立ち止まったまま辺りを見回しても、そこは何のへんてつも無い資材置き場の片隅だった。よく見るとかなりの敷地面積のようだった。
雄二は自分の倒れていた地面を足でドンドンと蹴ってみた。次に右手で空を掴んでみた。さらにその場で飛び跳ねてみた。
「フフ、戻るわけないよな」
絶望感が大きな波のように襲い掛かってきた。
雄二はその場にしゃがみ膝を抱えた。
「絵里には本当に申し訳ないことをした」
昨夜絵里に対して言ったことを頭の中で反芻し、もう一度整理した。
「じゃあ、明日の夜までに、なにかニュースになるような事件とかあったら今教えて。もしそれが本当に起きたなら、信じるよ。明日の夜いろいろ話を聞いて、なんとか助けてあげられるように努力する。ただ、おじさんが言ったとおりのことが起きなかったら会わないからね、いい?」
「わかった。じゃあ、言うよ。なんかメモを取るといいかもしれないが」
「明日……、新幹線が……脱線します。鉄道事故史上最悪の惨事になります。乗客数は……524人で、運転士の名前は……タカハマ……マサミ、49才」
いぶかしげな目で見つめていた絵里の顔が頭から離れない。その後絵里はすぐに「わかった、じゃあ明日まで、絶対忘れないようにする」そう言って、踵を返そうとした時、「あっ、誰にも言わないから」と言って雄二に笑顔で手を振った。
あれが絵里の最後の姿となった。
そこは、ほんの2日前、警官に声をかけられて目を覚ました場所だった。最後にもう一度確認しておきたかったのだ。立ち止まったまま辺りを見回しても、そこは何のへんてつも無い資材置き場の片隅だった。よく見るとかなりの敷地面積のようだった。
雄二は自分の倒れていた地面を足でドンドンと蹴ってみた。次に右手で空を掴んでみた。さらにその場で飛び跳ねてみた。
「フフ、戻るわけないよな」
絶望感が大きな波のように襲い掛かってきた。
雄二はその場にしゃがみ膝を抱えた。
「絵里には本当に申し訳ないことをした」
昨夜絵里に対して言ったことを頭の中で反芻し、もう一度整理した。
「じゃあ、明日の夜までに、なにかニュースになるような事件とかあったら今教えて。もしそれが本当に起きたなら、信じるよ。明日の夜いろいろ話を聞いて、なんとか助けてあげられるように努力する。ただ、おじさんが言ったとおりのことが起きなかったら会わないからね、いい?」
「わかった。じゃあ、言うよ。なんかメモを取るといいかもしれないが」
「明日……、新幹線が……脱線します。鉄道事故史上最悪の惨事になります。乗客数は……524人で、運転士の名前は……タカハマ……マサミ、49才」
いぶかしげな目で見つめていた絵里の顔が頭から離れない。その後絵里はすぐに「わかった、じゃあ明日まで、絶対忘れないようにする」そう言って、踵を返そうとした時、「あっ、誰にも言わないから」と言って雄二に笑顔で手を振った。
あれが絵里の最後の姿となった。
