友子の家から十メートルくらい行くと大通りがある。絵里はタクシーを見つけるべく、そこまで全速力で走って行った。すぐにでもタクシーに乗りたかったのだが、なかなかつかまらなず、しばらくあたりをうろつくことになった。
ようやくタクシーを止め、車内に入ると、荒い息を整え、急いで行き先を告げた。
「新宿中央公園までお願いします」
ドライバーは咥えていた煙草を灰皿でもみ消したあと、低いトーンで「はい」と答えた。そしてゆっくりと車線を変えた。
時計の針は10時を過ぎていた。
絵里は流れる外の景色に視線を向けた。車内ではラジオが流れていた。そこでも日航機のニュースをやっていた。
気づくと太もものスカートをきつく握り締めていた。手にはびっしょり汗を掻いていた。バッグから煙草を取り出して吸おうと思ったがやめた。
もう少し早くわかっていれば、もう少し早く家を出ていれば、余裕で間に合ったと思った。
絵里はそれでも一縷の望みをかけた。「おじさん待ってて」絵里はドライバーからおつりを受け取ると、勢いよく車外に飛び出した。
公園内に入り、待ち合わせ場所の「水の広場」前にいった。しかし雄二の姿は無かった。
