1985年、僕は総理と呼ばれていた。

 絵里はフーっと大きく息をついた。

 「明日は昼間は無理だし、明後日は午前中に東京を出て北海道に帰るからねえ」

 絵里は腕を組み、少し考えて「じゃあ、明日の夜までに、なにかニュースになるような事件とかあったら今教えて。もしそれが本当に起きたなら、信じるよ。明日の夜いろいろ話を聞いて、なんとか助けてあげられる様に努力する。ただ、おじさんが言ったとおりの事が起きなかったら会わないからね、いい?」
 絵里は上目遣いでそう言った。

 雄二は絵里の目を見た。絵里の顔からは笑みがもれている。瞬間、絵里は自分の言ってることを信じてないなと感じた。無理もないと雄二は思った。



 数秒後、雄二は絵里とぶつかる視線をそらし、腕を組み、しばらく何をどう言うか考えた。

 そして、静かに口を開いた。