1985年、僕は総理と呼ばれていた。

 黒づくめのロックファッションに身を包んだ若者たち、どちらかというと男の数が幾分多いような気がした。中には、かなり特徴的な髪型をしているものや、この時代に流行った記憶のある格好をしているものもいた。
 そう多くもないが学生服姿の子もいた。それなりに人が埋まってきても、髪の毛の色が「金色」をしている人はまずいなかった。

 「これなら探しやすいな」そう呟くと雄二は立ち上がった。

 白の開襟シャツに紺色のスラックスといういでたちの雄二は、かえってその場では目立つ存在になっていて、ウロウロ歩くたびに若者達からは容赦ない視線が浴びせられていた。


 6時15分、絵里が来た。金色の髪の毛が大きな目印となった。

 雄二の心臓はビクンと大きく跳ねた。そして、鼓動が速くなるのがわかった。


 少し距離があったので、不安ではあったのだが、絵里は何人かともつれるようにしてこちらに向かってきた。

 5メートルくらい先の距離まで来た絵里の顔を見た。


 間違いなく、絵里だった。