単純だな。 簡単だな、私。 桐谷慎は天才だ。 私をバカで都合のいいオンナにさせる天才だ。 ズルい。 私がアンタに夢中なコト知っててそんなこと言うんだもん。 目の前には、私を見つめて子どものように微笑むドSな部長。 そんな彼の大きくて厚い胸にコツンとオデコを当てて。 「そんなの……、知ってるよ。 言ったでしょ? “アンタは私が幸せにしてあげる”…って。」 そう言って彼の腰に手を伸ばすと 「うん…、知ってる…。」 桐谷慎はいとおしそうに 私の体を優しく柔らかく抱きしめた。