「まあ…、考えても仕方ない。ここは田中の言っていた通り、桐谷慎という男を信じよう。」




田中課長はそう言って、喜多川クンの肩をポンポンと叩いた。







「みんなもだ。
部長が捕まらないのは何か考えがあってのことだろう。
もう定時を過ぎているし…、仕事が上がったヤツから帰って構わんよ。」








田中課長はそう言ってハァと盛大なため息を吐いた。









可哀想に。

桐谷慎も一言“大丈夫だ”くらいメールしてあげれば、田中課長も安心できるだろうに。






負のオーラを発しながら。
部屋の隅っこで肩を落とす課長を心底可哀想だと私は思った。