誤魔化そうとすればいくらだってできるハズ。
桐谷慎は頭がキレる人だもん。
おバカな私なんてその気になればいくらだって騙せるハズなのに。
“ウソはつかない”
と言ってくれた。
その言葉が死ぬほど嬉しかった。
「ありがとう、桐谷慎…。」
「ハイハイ、どういたしまして。」
せっかく私がお礼を言ったのに桐谷慎はヘラヘラ笑いながらリビングへと消えていく。
だけど…それが彼なんだ。
本心はいつもこの仮面の奥にある。
ヘラヘラしてて何考えてるのかわかんなくて、誤解してしまう時もあるけれど。
本当の桐谷慎は優しくて思いやりのある人だ。
そして…誰よりも誠実な人。
それを思い出した私は彼の背中を見つめながら…
勇気を振り絞ってリビングへと歩きだした。



