桐谷慎の部屋にたどり着くまで、私たちは一言も言葉を交わさなかった。





桐谷慎が何を感じ、何を考えてるのかはわからない。







だけど…

抱き寄せられる度に香る、Happyの匂いが私の胸を苦しくさせた。









ガチャリ









重い扉を開くと目の前にに広がるのは桐谷慎のお洒落な部屋。



いつもはここに来るのが楽しみで。

彼と過ごす空間がとても心地いいと感じていたのに。








何故か今日は…、気持ちが重い。










私が玄関の中に入るのを躊躇していると。







「おいで?」








傷ついたような顔をして。

桐谷慎は苦しそうに呟いた。